2018年04月12日

『沖縄 うりずんの雨』

『沖縄 うりずんの雨』(ドキュメンタリー)
評価:☆☆☆☆☆☆・・・・
年度:2015年
鑑賞:封切り時にスクリーンで。
監督:ジャン・ユンカーマン
俳優:
製作:日本
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『沖縄 うりずんの雨』




コメント

ドキュメンタリー映画の☆付けの基準は大いに迷っておりますので、後日修正するかもしれません。この映画の場合、沖縄問題のわかりやすさに絞って評価すれば☆9ケあってもおかしくありません。

観賞後すぐに書いた紹介文をそのまま批評欄に転載しておきます。
少しでも臨場感が出るかと思いまして。



批評

ドキュメンタリー映画『沖縄うりずんの雨』を観てきました。
客観性を保ち、とてもわかりやすい映画なので、どなたにもおすすめできます。

映画が1853年のペリーの艦隊の琉球寄港から始まったのには驚きました。
その後のナレーションは「それから92年後の1945年。激しい地上戦の末、アメリカ軍は沖縄を占領することになりました。ペリーの時代から念願だった沖縄占領が現実となりました。(パンフレットより引用)」と続きますから、良い意味でキャッチー。惹きつけられます。一般の日本人は、ペリーが浦賀の前に那覇に寄港したことすら教わっていませんから。

上映後、米国人ユンカーマン監督のトークと質疑応答がありました。私たちはこの日、監督の生の声をぜひ聞きたいと出かけたのでした。
20代から「コザの街で、反戦兵士の支援活動に関わ」っておられたとのこと。
トークと応答からは、監督の知的で誠実な人柄が伝わりました。
パンフレットにサインをいただき、妻は握手。
(私は手のひらが原因不明の惨状なので、遠慮しました。無念。)


『沖縄 うりずんの雨』




映画は沖縄の現状の問題点を提示した上で、
なぜこうなったのかその歴史的背景を説きます。まるで教科書のように。
でもけっして理屈っぽくはなく、抽象に偏りません。
なぜなら、多数の歴史的証言の積み重ねと実写映像を駆使して製作されているからです。

沖縄戦時の日本兵からは、当時の日本兵が持っていた沖縄への差別意識が語られます。
占領時の米兵からは、沖縄が楽しい快楽が待つ赴任地であったことが語られます。
元学徒隊の沖縄人からは、糸満に逃げていく悲惨な道のりと、慰安婦の存在が語られます。
沖縄の写真家(石川真生さん)からは、沖縄差別と黒人差別の類似が語られます。
、、、、

これらの手法によって監督は、今日の沖縄という在り様に至る歴史的背景をわかりやすく浮き彫りにすることに成功されました。


『沖縄 うりずんの雨』




繰り返します。この映画はすべての方におすすめします。
もちろん、特に沖縄に少しでも関心があるかた、近現代史が好きな人には。沖縄の歴史にかなり詳しいあなたにも、新しい発見があるのではないかと思います。
ユンカーマン監督は「三上智恵さんの『戦場ぬ止み』とセットでみてください」とおっしゃっていましたが、わたしも同感です。
多くの日本人と多くの米国人に見て欲しい、と願うのは監督も私も同じです。

いまなら大阪十三の「七藝」で両作品が鑑賞できます。
この映画館のややヘタッた椅子での2時間半は少しお尻が痛くなるかもしれませんが、無駄な時間にはならないと思いますよ。



『沖縄 うりずんの雨』

石川真生さんの写真展にもぜひ。(→この写真展はすでに終了していますが、石川さんの写真展は随時開かれていますのでぜひ)


さて、ここから後は私のささやかな思い出話。
私の亡父は鼻と唇の間に大きな傷跡がありました。
亡父は先の戦争で陸軍兵士としてフィリッピンに配属されていましたが、
日本国内に転属されるという幸運に恵まれ、宮崎で本土決戦の小隊を指揮することになりました。
(フィリッピンの部隊は全滅したそうです。)
宮崎での訓練中、戦車と「衝突」して怪我をしたと亡母から聞かされていましたが、
それはおそらく、敵戦車の下に飛び込んで自爆する訓練だったのでしょう。
亡父は私に何も語りませんでしたが、
この『沖縄うりずんの雨』に登場された元日本軍兵長近藤一氏の証言を聞いて合点しました。
パンフレットより引用します。
「(略)爆雷を持って、戦車隊に突っ込んで行って、全滅したということが起きたわけなんですね。戦車に対してダーッと走って行って、30mから20mぐらい行って、戦車の下に放り込むという。(略)こんな無様な戦いは、世界中どこにもないと私はそう思った。(略)」



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