2019年08月26日

『食べる女』:中途半端になりました

データ
『食べる女』

評価:☆☆☆☆・・・・・・
年度:2018年
鑑賞:2019年BS/CSで視聴。
監督:生野慈朗
原作:筒井ともみ
音楽:富貴晴美
主題歌:Leola:(『Kissing』)
俳優:小泉今日子 鈴木京香 沢尻エリカ 前田敦子 広瀬アリス 山田優 壇蜜 
シャーロット・ケイト・フォックス ユースケ・サンタマリア 池内博之 勝地涼 小池徹平
RYO 間宮祥太朗 笠原秀幸 遠藤史也 PANTA 眞木蔵人 鈴木優菜 宇田琴音 瀧福之助 小島聖
製作国:日本
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『食べる女』:中途半端になりました

公式HP


コメント

本作のHPに精神科医の香山リカさんが寄せたコメント。
「ひとは胃袋をいっぱいにするためにではなくて、こころをいっぱいにするために食べている。精神科医の私が30年かけてたどり着いた仮説が、元気いっぱいの女たちによってカッコよく証明された!」=A

ところが同じ本作のHP の冒頭に、こんなキャッチコピーが。
「恋。してみなくちゃわからない。ごはん。食べてみなくちゃわからない。だから、やってみよう!!」=B

さらにHPには原作者で脚本を書いた筒井ともみさんの言葉が。
「今作品は、女たちが『玉子かけごはん』を食べることから始めようとするレボリューションの物語です。・・・他者をあてにするより、まず自分で『おいしい女』になろう。おいしい女になって、おいしい男を育てよう。育ててみようじゃないか。ガンバレ女たち。ついてこい男たち。」=C


Aは、観客として納得がいきます。そういう映画になっていれば心にしみる成功作だったのではないでしょうか。
ところが、本作にはBのチャレンジな面も加味したくなったのでしょう。Bに徹底していれば楽しい映画になったでしょう。
そして脚本上ではきっとCを表現したいと考えていたのでしょう。女性応援作にして男性を叱咤する映画。しかしそれは徹底されていませんでした。
というわけで中途半端なテーマで製作してしまったことが、とても残念でした。

中途半端さの原因はもう一つあります。
女優陣はとても豪華です。しかしその一人一人の役どころが深められていないのです。それぞれの過去の人生がストーリーとして女優に内実化されていないように見えます。とても短期間で撮影されていませんか。それとも脚本段階でそのあたりが練られていなかったのでしょうか。

たとえば鈴木京香さん。なぜ小料理屋の女将をしているのかなどなど彼女の人生がどこにも表現されていません。セリフでは若い見習い料理人を”食べまくっている”という説明がありましたが、そういう危なさがどうにも感じられませんし、不可欠であろうそういうセックスシーンもありません。(沢尻エリカさん、広瀬アリスさん、シャーロット・ケイト・フォックスさんにはあるのに)せめて若い男の子をなぶるくらいのシーンが欲しかった。

また、少女が二人登場します。その少女たちも女性ですし、未来の大人の女です。その少女たちも”ふつう”ではない家庭環境で生きています。けれどそのことに対する演技をさせていませんし、彼女たちにおいしい食べ物を頬張らせるシーンもありません。うち一人の母親壇蜜さん(好演)は「大人になれば美味しさがわかる」と言って娘にワインを飲ませるのですが、ここはワインではないでしょう。苦かったり辛かったりする大人の食べ物を食べさせないと首尾一貫しません。

そして肝心の料理映像に魅力がありません。”味覚音痴”のシャーロットさんがたちまち覚醒する料理がこれですか。平凡な料理であってもたまらない滋味を備えた料理はありますし、それを映像で表現できるはずです。しかしそうはしませんでした。わたしこの映画の料理を食べたいとは思いませんでしたよ。もっとも、作ってくださるのが鈴木京香さんだったり小泉今日子さんだったりするなら喜んでいただきますけれど(笑)

映像や音楽は心地よいものでした。

結論として、脚本家と監督には、思い切りの良い筋立てを作る力と人間理解力が不足していたため、物語の焦点がぼやけ、説得性が生まれなかったということになりましょう。
会心作になりそうな着想だったのに残念です。



『食べる女』:中途半端になりました

沢尻エリカさん:編集者っぽさは感じられませんでしたが、ユースケ・サンタマリアさんの料理の説明に思わず乗ってしまうところは笑ってしまいました。説得力があったからです。予告編より。



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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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