2020年01月18日

『贅沢な骨』:嫌いじゃない

データ
『贅沢な骨』

評価:☆☆☆☆・・・・・・
年度:2001年
鑑賞:2020年BS/CSで視聴。
監督:行定勲
俳優:麻生久美子 永瀬正敏 つぐみ 田中哲司 渡辺真起子 光石研  津田寛治
製作国:日本
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『贅沢な骨』:嫌いじゃない




コメント

行定監督を世に知らしめた快作『GO』の約二か月前に公開された作品です。
原作漫画のある『GO』に対して本作に原作はなく、監督が益子昌一さんと共同で脚本を書いています。

同居し互いに思い合う孤独な女性二人が、ある男性の登場で嫉妬や疎外感を感じるようになる。でも結局は彼を触媒にしてカップルになる。・・・

タイトル『贅沢な骨』が醸す期待感とは裏腹に、学生の自主制作映画(by 妻)のような印象が残る作品でした。
行定勲さんの監督三作目ということですが、作り手の思いが前に出過ぎて、まだまだ観客との距離感がつかめていない、あるいは観客がどう見るかという視点が弱かったように思います。

一つだけその具体例を挙げます。ミヤコ(麻生久美子さん)はサキコ(つぐみさん)と同居しています。同居の経緯はわかりません。ミヤコはホテトル嬢として得た収入で二人の生活費を稼いでいます。サキコは自分も働くというのですが、ミヤコは認めません。自分は不感症だからこういう仕事をしても苦にならないのだと言い、サキコを「家」に置きたがります。ミヤコはそれほどサキコを「大切に」思っているようです。ホテトル嬢の仕事に行くときには「行ってきます」「行ってらっしゃい」、帰ったときには「ただいま」「お帰りなさい」。そういう夫婦のような会話に心が安らぐようです。まるで昭和の夫ですね。そうそう、サキコに似合いそうだと思う(もらった本人は嫌がる)服や靴を買ってきたりします。これも昭和のお父さんの土産かプレゼントを思い起こさせます。

以上は映画の冒頭部でだいたい表現されます。ミヤコのサキコに対する表情や行為から、てっきり二人はすでに女性同士のカップルなのだろうと看てとってしまいました。多くの観客もそう思ったことでしょう。ところが実は二人はカップルではないのです。終盤にミヤコがサキコに好きだと告げて(カミングアウトして)ようやく二人は愛し合うことになります。これって、おいおい二人とも早く自分と相手の本心に気付けよ、というめぞん一刻パターン(古い?)の映画なのですか?違いますよね。


他にも、ナレーションの過剰使用・ちょっと恥ずかしい陳腐なセリフ・センスを出したつもりの無駄なシーン・説明不足・逆に重複・・せっかくリリカルな映像(by 妻)なのに何かと残念な作品ではあります。


それなのに、見ている時も見終わった今も、本作に対してけっこう好意的な自分がいます。それはあの傑作『リバーズ・エッジ』を作った行定勲監督へのエコ贔屓ではありません。おそらく麻生久美子さん(当時22,3歳)と永瀬正敏さんという二人のスキルが優れていたからです。麻生さんは同性へのジェラシーや初めての性の喜びを観客に明確に伝えます。金魚のように口をパクパクして呼吸する様子も自然です。永瀬さんは「君は汚れてなんかいない。きれいだ。」などという”やめてくれ〜”なセリフを私が納得寸前のところまで持っていきました(笑)。つぐみさんも熱演です。この三人の力でなんとかかんとか映画を維持したのです。うぶすぎる監督の脚本を現実の地面にわずかに着地してあげたのです。ま、それも監督の演出の腕だと言えばそうかもしれませんが。


結論として、特にこの三人のファンでない限り観る必要はないでしょう。
私は麻生さんや永瀬さんが好きなので105分を後悔していないですよ。

蛇足ですが、若い田中哲司さんが、キモいホテトル客を演じています。ミヤコの最後の客にもなりました。でもまだキモさは彼の素質から見れば今一歩です。
また、つぐみさんがいわゆる”脱ぎ要員”として奮闘していてチャーミングですが、ホテトル嬢の麻生久美子さんは背中しか見せません。こういうところは好きじゃないです。麻生さん側にオトナの事情があるならつぐみさんも脱がさなくていいと思うのです。不自然です。



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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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