2019年08月24日

『ブルースブラザース』:超傑作音楽コメディー

データ
『ブルースブラザース』

評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆・
年度:1981年
鑑賞:ビデオ、DVDで鑑賞。2019年午前10時の映画祭で鑑賞。
監督:ジョン・ランディス
脚本:ダン・エイクロイド ジョン・ランディス
音楽:アイラ・ニューボーン
俳優:ジョン・ベルーシ   ダン・エイクロイド
ジェームズ・ブラウン キャブ・キャロウェイ レイ・チャールズ キャリー・フィッシャー
アレサ・フランクリン ヘンリー・ギブソン マーフィ・ダン スティーヴ・クロッパー
ドナルド・ダック・ダン ウィリー・ホール トム・マローン アラン・ルビン 
ルー・マリーニ マット・マーフィ ツイッギー 
チャカ・カーン ジョン・リー・フッカー
製作国:アメリカ
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コメント

戦後のアメリカコメディー映画として最高の出来栄えだと思っています。
もっとも、私が観たわずかな作品の中での評価ですが。
脚本のダン・エイクロイドさんは本当にいい仕事をしました。
監督のジョン・ランディスさんの演出のゆるいキレも素晴らしい。
そしてもちろん、超有名登場人物たちのなりきり歌と演奏!
アレサ・フランクリンさんが歌うシーンは、すべてのアメリカミュージカルのどのシーンより好きです。
カーチェイス、カークラッシュ映像としてもピカイチです。誰一人ケガしていないように見えるのがいいですね。
おしゃれな高級モールだけが破壊されるのも痛快です。
ベルーシさんがたった一度サングラスを外した時の、そのつぶらな瞳の嘘くささは忘れられません。キャリー・フィッシャーさんが騙されるのも無理はない、、かな(笑)

でも、それだけで最高の出来栄えになるわけではありません。


『ブルースブラザース』:超傑作音楽コメディー


出典不詳:ご連絡ください



批評

再結成なったThe Blues Brothers Bandがカントリー酒場の金網付き舞台で演奏する有名なシーンがあります。
そこで歌われた曲は「Gimme Some Lovin' 」(ブーイングの嵐)、「Theme from Rawhide」(熱狂の嵐)。
そして三曲目が「Stand by Your Man」。タミー・ワイネットさんの歌で大ヒットしたこの曲は「CMT(カントリー・ミュージック・テレビジョン)が行った「Top 100 Country Music Songs」の1位に選出されている。(wikipedia)」カントリー史上超有名な曲です。
歌詞の内容は、”女にはわからない男の世界ってもんがあるんだから、辛いことがあってもあんたの好きな男のそばにいて支えてやっとくれ”的なきわめて男尊女卑なものなのですが、その歌で観客のカップルは互いの目を見やり、肩を抱いて愛情全開。独り者の兄さんは涙目というお約束付き。
カントリーミュージックがアメリカの(当時)多数派であった保守層に支持される音楽だということがよくわかりますし、彼らはブルースなどと言う音楽は金輪際認めないこともはっきり示されます。





ブルースとはアフリカ系アメリカ人(黒人)起源の音楽で、ベースには弱者の生活や人生の哀感が横たわっています。アレサ・フランクリンさんの「Think」はR &B(リズムアンドブルース)とかソウルといった歌唱ですが、彼女の歌にブルースの魂が宿っていると感じるのは彼女の汚れたユニフォームや窓の外をゾンビのように歩く通行人黒人エキストラを見るまでもなく明らかでしょう。ここは黒人街です。
私は「Tap the Pop」さんのブログで、ブルースバンドThe Blues Brothers結成のエピソードとオーティス・レディングさんの「ドック・オブ・ザ・ベイ」との関わりを知りました。この曲がソウルなのかロックなのかブルースなのかわかりませんが、私はブルースの名曲だと受けとめています。
白人保守層が黒人由来の音楽ブルースやソウルを好まないことを中押ししました。





さらにだめ押しします。
本作で兄弟を追い詰めるのは、カントリーバンド、警察、そしてネオナチです。
カントリーバンドのポジションについてはこれ以上説明しません。
また、警察機構(≠個々の警察官)は弱者の味方ではなく、権力の統治装置であることは古今東西で普遍です。いま沖縄の辺野古を観測すればわかります。
そして、白人(ゲルマン)の純粋優位という差別思想を国家制度にまで作り上げてしまったナチスは、強者だけが生存を許されるという信念で成り立っています。
つまり社会的弱者を抑圧する側の三者が、本作でブルース兄弟を追い回していくのです。

私はこの映画を社会派映画として観るべしなどとはこれっぽっちも考えていません。
しかしながら、私は良質のコメディには哀愁・ペーソスがあるべきだという信念を持っています。
それが備わっているから本作は一級のコメディーなのだと考えます。
そしてそのペーソスは底辺からの視点、あるいは弱者への共感からだけ生まれるものです。
強者、支配者側と結託したコメディーには三文の価値もありません。それはお仕着せの戦地慰問団の演芸と同じです。

おまえは吉本興業にそれを言いたいのか?と言うあなた、正解です。
相手は吉本だけではありませんが。

何のことかとお尋ねのあなたは、日刊ゲンダイの記事をご覧ください。





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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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