2019年11月24日
『もぐら』:田辺・弁慶映画祭のコンペ出品
データ
『もぐら』
評価:短編(36分)のため星評価せず
年度:2019年
鑑賞:2019年11月22日田辺・弁慶映画祭にて
監督:山浦未陽
脚本:山浦未陽
エンディング曲:西村 亮哉
俳優:加藤才紀子(あおい=はる)、見津賢(けいた)、川久保晴、今野誠二郎、長瀬ねん治
製作国:日本
速報:映画.com賞を受賞されました。おめでとうございます。
予告編より
コメント
映画祭のパンフレットから、山浦未陽(やまうらみよう)監督のプロフィールを引用しますと、
1996年、東京生まれ。
慶應義塾大学環境情報学部。早稲田大学の映像制作自習で映画制作を学ぶ。
映画『もぐら』が初監督作品。
(・・つまり、是枝裕和さんの助言を受ける立場)
ということで、本作は大学生の手になる作品ということになります。コンペティション部門で上映された作品は、「全国から応募された163作品の中から入選した9作品。」(上掲パンフ)ということですから、かなりの倍率をくぐって選ばれた作品です。
映画の中心は、でりへる(カタカナだとこのブログでは使えないみたい)で働く20代女性とデリバリー運転手が夜の街を走る車のうちそとの描写です。
車外を移ろうネオンやヘッドライトの川のような流れの映像は美しく浮ついています。それに対して、車内後部座席の主演はるの少し疲れた表情とバックミラーに映る運転手けいたの目の真摯さ、そしてお互いに交わす僅かな会話がかもす雰囲気は夜の川の泡沫のようです。
映画の前提として、もぐらは光を感じない、つまり日の目を見ない動物だという知識が必要です。しかしこの二人は一緒に朝日を眺めます。これが本作のクライマックスです。もぐらが地上で生活できる日が来ることの暗示だと思えますが、はたしてそれが可能なのか、将来はわかりません。テーマがもぐらである以上難しいのかもしれません。※
終盤になって初めて真相とテーマに気づくというなかなかの監督の手腕。あ、そういうことか、と。もっとも、私が短編慣れしておらずまた老人耳のせいもあったのかもしれませんが。
ただ、その真相がわかる瞬間、おにぎりの場面。おにぎりを手渡しする画面で察しなさいということなのでしょうが、渡された直後のはるの表情はやはり見たかった。そこまで想像せよというのでは、映像という娯楽を観たい観客の快楽を大きく削ぐことになります。俳優の腕の見せ所ですから。そこだけが残念でした。
知的な構成と車内から見た夜の街の映像に監督の才能を感じました。山浦未陽さん、記憶しておきます。主演の加藤才紀子さん、ちょうど良いリアルな演技で魅力的でした。
※本作のタイトルから園子温監督の佳作『ヒミズ』を思い出しながら映画祭に足を運びました。
ヒミズもまたモグラの一種ですが、一般のモグラと違って土中だけでなく落ち葉の層をも生活圏にできます。しかしやはり光が差すところでは生きられません。光に殺されるのではなく、追われて地表にでて、食べるものがなくて餓死してしまうのです。また、常に何かに触れていないとパニックを起こすという説明も散見します。『ヒミズ』の住田祐一(染谷将太さん)と本作のあおい=はる(加藤才紀子さん)との違いがあるとすればどこだろう、などと考えさせるのは、もしかして山浦監督の園子温オマージュのフィールドに誘われてしまったのかもしれませんね。知らんけど。
『もぐら』
評価:短編(36分)のため星評価せず
年度:2019年
鑑賞:2019年11月22日田辺・弁慶映画祭にて
監督:山浦未陽
脚本:山浦未陽
エンディング曲:西村 亮哉
俳優:加藤才紀子(あおい=はる)、見津賢(けいた)、川久保晴、今野誠二郎、長瀬ねん治
製作国:日本
速報:映画.com賞を受賞されました。おめでとうございます。
予告編より
コメント
映画祭のパンフレットから、山浦未陽(やまうらみよう)監督のプロフィールを引用しますと、
1996年、東京生まれ。
慶應義塾大学環境情報学部。早稲田大学の映像制作自習で映画制作を学ぶ。
映画『もぐら』が初監督作品。
(・・つまり、是枝裕和さんの助言を受ける立場)
ということで、本作は大学生の手になる作品ということになります。コンペティション部門で上映された作品は、「全国から応募された163作品の中から入選した9作品。」(上掲パンフ)ということですから、かなりの倍率をくぐって選ばれた作品です。
映画の中心は、でりへる(カタカナだとこのブログでは使えないみたい)で働く20代女性とデリバリー運転手が夜の街を走る車のうちそとの描写です。
車外を移ろうネオンやヘッドライトの川のような流れの映像は美しく浮ついています。それに対して、車内後部座席の主演はるの少し疲れた表情とバックミラーに映る運転手けいたの目の真摯さ、そしてお互いに交わす僅かな会話がかもす雰囲気は夜の川の泡沫のようです。
映画の前提として、もぐらは光を感じない、つまり日の目を見ない動物だという知識が必要です。しかしこの二人は一緒に朝日を眺めます。これが本作のクライマックスです。もぐらが地上で生活できる日が来ることの暗示だと思えますが、はたしてそれが可能なのか、将来はわかりません。テーマがもぐらである以上難しいのかもしれません。※
終盤になって初めて真相とテーマに気づくというなかなかの監督の手腕。あ、そういうことか、と。もっとも、私が短編慣れしておらずまた老人耳のせいもあったのかもしれませんが。
ただ、その真相がわかる瞬間、おにぎりの場面。おにぎりを手渡しする画面で察しなさいということなのでしょうが、渡された直後のはるの表情はやはり見たかった。そこまで想像せよというのでは、映像という娯楽を観たい観客の快楽を大きく削ぐことになります。俳優の腕の見せ所ですから。そこだけが残念でした。
知的な構成と車内から見た夜の街の映像に監督の才能を感じました。山浦未陽さん、記憶しておきます。主演の加藤才紀子さん、ちょうど良いリアルな演技で魅力的でした。
※本作のタイトルから園子温監督の佳作『ヒミズ』を思い出しながら映画祭に足を運びました。
ヒミズもまたモグラの一種ですが、一般のモグラと違って土中だけでなく落ち葉の層をも生活圏にできます。しかしやはり光が差すところでは生きられません。光に殺されるのではなく、追われて地表にでて、食べるものがなくて餓死してしまうのです。また、常に何かに触れていないとパニックを起こすという説明も散見します。『ヒミズ』の住田祐一(染谷将太さん)と本作のあおい=はる(加藤才紀子さん)との違いがあるとすればどこだろう、などと考えさせるのは、もしかして山浦監督の園子温オマージュのフィールドに誘われてしまったのかもしれませんね。知らんけど。
Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)
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