2018年10月30日
『リバーズ・エッジ』:生きている実感があるか
データ
『リバーズ・エッジ』
評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆・
年度:2018年
鑑賞:封切り時にスクリーンで鑑賞。
監督:行定勲
原作:岡崎京子『リバーズ・エッジ』(宝島社刊)
音楽:世武裕子
主題歌:小沢健二『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』
俳優:二階堂ふみ(若草ハルナ)吉沢亮(山田一郎)上杉柊平(観音崎)
SUMIRE(吉川こずえ) 土居志央梨(小山ルミ) 森川葵(田島カンナ)
製作国:日本
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写真はすべてパンフレットより
コメント
2018年に公開された映画で私が鑑賞した中では、ベストな作品になりました。
同じ年の公開の『万引き家族』は俳優の演技面でパーフェクトな秀作でしたが、本作の方が私の中に食い込んだように感じます。
私は、本作に描かれた荒野のような十代を送ったわけではないのに、なぜこれほどシンクロしてしまうのかずいぶん考え込んでしまいました。
至った結論はシンプルです。
時代が異なるだけで、私を取り巻く荒野があり、私の内部にも荒野があったのです。
これは普遍的な漫画を原作にした普遍的な映画なのでした。
それを気づかせてくれたのは、誰よりもハルナ(二階堂ふみさん)の空洞(しかし温かい)のような、自分が何者かを知らない目の再現のおかげです。
生きているのだという実感が持てない。
その実感をどうやって手に入れるか、
模索する若者の物語。
本作の紹介は、妻の文章を借ります。
『リバーズ・エッジ』、私が映画業界の人だったら何らかの形でこの現場に関わりたかったなー、と思うような、スタッフとキャストの熱量を感じる作品だった。
原作は90年代にリアルタイムで読んで、ヒリヒリしすぎて手放して、でも10年ぐらい前にまた買ってしまったという、なんか深いところまで刺さった作品。
公開前にネットでこの二階堂ふみを見て、「あっ、ハルナ(主人公)だ!」って思った。二階堂さんは16歳で原作を読んで、「すごく傷ついたような気持ちになった」という。その感性を信じて観に行った。
結果、二階堂さんはすごくハルナだったし、そこまで期待していなかった山田役の吉沢亮くんもすごく山田だった。二人を取り巻く森川葵、土居志央梨、SUMIRE、上杉柊平といった若い役者さん達も魂のこもった演技で、キーワードの「平坦な戦場」を団体戦で表現していた。
閉塞感とか孤独とか焦燥とか、生に対する実感のなさとか。そういう言葉が浮かんでくるような、明るくない群像劇が好きな人にはおすすめかもしれません。

批評
原作で印象深かった文章が、本作でも冒頭のナレーションとして使われていました。
わたしたちの住んでいる街には
川が流れていて、
それは河口にほど近く広くゆっくり淀み、臭い。
河原にはセイタカアワダチソウがおいしげっていて、
よくネコの死骸が転がっていたりする。
どうぞ声に出して三回ほど読んでみてください。
わたしたちは今もこういう街に、住んでいるはずです。
いえ、川の有無や都会・過疎地の別など具体的な地理環境を申し上げているのではありません。
高校生でなくても同じです。
そうだな、こういう街に住んでいるんだよなわたしの心は。
と共感していただいた方にはこの映像作品がねじ込まれていくはずです。
それ以上書く言葉が見つかりません。

『リバーズ・エッジ』
評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆・
年度:2018年
鑑賞:封切り時にスクリーンで鑑賞。
監督:行定勲
原作:岡崎京子『リバーズ・エッジ』(宝島社刊)
音楽:世武裕子
主題歌:小沢健二『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』
俳優:二階堂ふみ(若草ハルナ)吉沢亮(山田一郎)上杉柊平(観音崎)
SUMIRE(吉川こずえ) 土居志央梨(小山ルミ) 森川葵(田島カンナ)
製作国:日本
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写真はすべてパンフレットより
コメント
2018年に公開された映画で私が鑑賞した中では、ベストな作品になりました。
同じ年の公開の『万引き家族』は俳優の演技面でパーフェクトな秀作でしたが、本作の方が私の中に食い込んだように感じます。
私は、本作に描かれた荒野のような十代を送ったわけではないのに、なぜこれほどシンクロしてしまうのかずいぶん考え込んでしまいました。
至った結論はシンプルです。
時代が異なるだけで、私を取り巻く荒野があり、私の内部にも荒野があったのです。
これは普遍的な漫画を原作にした普遍的な映画なのでした。
それを気づかせてくれたのは、誰よりもハルナ(二階堂ふみさん)の空洞(しかし温かい)のような、自分が何者かを知らない目の再現のおかげです。
生きているのだという実感が持てない。
その実感をどうやって手に入れるか、
模索する若者の物語。
本作の紹介は、妻の文章を借ります。
『リバーズ・エッジ』、私が映画業界の人だったら何らかの形でこの現場に関わりたかったなー、と思うような、スタッフとキャストの熱量を感じる作品だった。
原作は90年代にリアルタイムで読んで、ヒリヒリしすぎて手放して、でも10年ぐらい前にまた買ってしまったという、なんか深いところまで刺さった作品。
公開前にネットでこの二階堂ふみを見て、「あっ、ハルナ(主人公)だ!」って思った。二階堂さんは16歳で原作を読んで、「すごく傷ついたような気持ちになった」という。その感性を信じて観に行った。
結果、二階堂さんはすごくハルナだったし、そこまで期待していなかった山田役の吉沢亮くんもすごく山田だった。二人を取り巻く森川葵、土居志央梨、SUMIRE、上杉柊平といった若い役者さん達も魂のこもった演技で、キーワードの「平坦な戦場」を団体戦で表現していた。
閉塞感とか孤独とか焦燥とか、生に対する実感のなさとか。そういう言葉が浮かんでくるような、明るくない群像劇が好きな人にはおすすめかもしれません。

批評
原作で印象深かった文章が、本作でも冒頭のナレーションとして使われていました。
わたしたちの住んでいる街には
川が流れていて、
それは河口にほど近く広くゆっくり淀み、臭い。
河原にはセイタカアワダチソウがおいしげっていて、
よくネコの死骸が転がっていたりする。
どうぞ声に出して三回ほど読んでみてください。
わたしたちは今もこういう街に、住んでいるはずです。
いえ、川の有無や都会・過疎地の別など具体的な地理環境を申し上げているのではありません。
高校生でなくても同じです。
そうだな、こういう街に住んでいるんだよなわたしの心は。
と共感していただいた方にはこの映像作品がねじ込まれていくはずです。
それ以上書く言葉が見つかりません。

Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)
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