2018年10月26日

『プラネタリウム』:ナタリー・ポートマンファンなら

データ
『プラネタリウム』

評価:☆☆☆☆☆・・・・・
年度:2017年
鑑賞:2018年BS/CSで視聴。
監督:レベッカ・ズロトヴスキ
俳優:ナタリー・ポートマン(ローラ、姉) リリー=ローズ・デップ(ケイト、妹) 
   エマニュエル・サランジェ(コルベン) 
   ルイ・ガレル(フェルナンド) アミラ・カサール(エヴァ) 
製作国:フランス、ベルギー
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『プラネタリウム』:ナタリー・ポートマンファンなら

公式サイトより


コメント

映画館で観れば良かったかもしれませんね。
映像も主役の姉妹もみごとに美しいから。
でもその映像の「解像度」の高さが逆に欠点にもなったのではないかなあ。
スクリーンで観ておけば映像に圧倒されて、その欠点が見えにくかったかもしれないから。

そもそもタイトルの『PLANETARIUM』が解せません。
(映画が始まると変にダサダサな活字で大写しになるのですが)
自宅の録画メディアに入れておいて、タイトルを眺めて、さあ、今夜は何を見ようかと検討している時、『プラネタリウム』というタイトルからもうミスリードされてしまいます。
というのは、記憶力が貧しい私の個人的な事情かもしれません。
内容に触れましょう、簡単に。

1930年代、まだ第二次大戦が始まる前、アメリカ人の姉妹がパリに渡ります。
二人は降霊術師との触れ込みです。
姉は司会進行、妹は降霊担当です。

戦争が近づき、人々は降霊術師を呼ぶ余裕がなくなり、興行は不調になっていきます。
そんな時、姉妹はコルベンという映画会社の重役に呼ばれ、降霊術を施します。
コルベンは霊と出会い、姉妹こそ本物の霊媒だと感じ、霊を映像化しようとひらめきます。
アメリカ映画と比べ劣勢になったフランス映画を復活させたいのです。
コルベンは姉妹に映画化を持ちかけ、了解をえます。

・・という導入部から、
コルベンの狂気のような映画への情熱。
映画界という華やかな世界とコルベンの魅力に翻弄される姉妹。
そして、
コルベンは映画に入れ込みすぎました。
また彼はユダヤ系であることが知られてしまいます。
ナチスドイツに「忖度」したフランス映画界から追放されます。
妹は降霊に力を使い果たして?死にます。
しかし姉は映画界に再び活路を見出そうと、次の一歩を踏み出します。

あらすじにもなっていませんが、ざっとそういう内容の作品でした。


ナタリー・ポートマンさんの表情演技はぴったりと状況にはまって適切です。毎回思うのですが、頭脳派ですね、演技が。考えて決めてその通り演じている様子がよくわかります。その分やや仮面的に見える時がありますが仕方ないでしょう。
リリー=ローズ・デップさんは、ついつい父のジョニー・デップさんの顔を思い浮かべてしまいがちですが、とてもナチュラルにやや暗い役柄を演じていました。
エマニュエル・サランジェさんは目が特徴的でセクシーな俳優だと思います。存在感ある演技でした。


さて、
映像の美しさに加え、ミスのないキャスティングに思えるのに、なぜ鑑賞後の心の震えがないのでしょう。

逆説的ですが、映像の「解像度」が良すぎ、姉妹が美しすぎた(=美しく撮りすぎた)ため、姉妹の胡散臭さやマイナー感が損なわれたことも一因だと思います。
真偽のわからない、放浪の降霊術師姉妹なのですから、いかに野心家な姉が仕切ろうと、もう少し野暮ったさが欲しかったと思うのです。(二人がおしゃれという意味ではなく、映像そのものを指しています。)
恐山のイタコとは言いませんが、これでは映画のリアル感が失せてしまいます。

しかし、もっと重要な敗因があります。
それは批評欄で書きます。




批評

プラネタリウム(PLANETARIUM)はほんとうの星空ではありません。
序盤に美しい本物の星空を見せ、終盤に映画セットの星空を見せます。
ですから、監督の狙いは明白です。

本作は、本物と偽物をめぐる物語なのです。
世間からは、降霊術師という存在の評価がちょうどそれに当たります。
コルベンもその真偽のボーダーに足をすくわれました。
姉妹の立場から言えば、真実スピリチュアルだった二人が、映画界に入ることで偽物になっていきます。

監督の意図はこのように明白なのに、文頭に書いたように、『PLANETARIUM』というタイトルは解せません。
監督はその意図一本に絞ってグイグイとストーリーを追っていくべきだったのです。
しかし残念ながら、美しい映像を撮ろうとしすぎました。
枝葉であるロマンスに深入りしてしまいました。
映画界やコルベンにもこだわりすぎました。
あれもこれもと欲張ってしまい、よくある新進監督の独りよがり作品になってしまったのです。

鑑賞中、鑑賞後の感動に包まれながら、
「あ〜そういうことだったのか!」と腑に落ちることは映画の醍醐味の一つですが、
本作の場合は、観客が監督に一目散に駆け寄って目を覗き込み、
「えー?それが言いたかったの?なんだあ。わかったわかった。」
と力一杯努力”してあげなければ”ならないのです。
難解な映画ではなく、未熟な映画なのです。


映像作りに才能がある女性監督だと思いますので、
今後はテーマを絞って佳作を生み出して欲しいと願います。




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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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