2018年10月12日
『怪物はささやく』
データ
『怪物はささやく』A MONSTER CALLS
評価:☆☆☆☆☆☆☆・・・
年度:2017年
鑑賞:2018年BS/CSで視聴。
監督:J・A・バヨナ
原作:シヴォーン・ダウド、パトリック・ネス
音楽:フェルナンド・ベラスケス
俳優:ルイス・マクドゥーガル(コナー) シガーニー・ウィーヴァー(祖母)
フェリシティ・ジョーンズ (母) トビー・ケベル(父) ジェニファー・リム
ジェラルディン・チャップリン(教師) リーアム・ニーソン(怪物の声)
製作国:アメリカ、スペイン
allcinemaの情報ページはこちら

予告編より
コメント
美しくて深い映像と、真摯な物語。
観ている間は久しぶりに傑作と出会った快感と共に在りました。
涙は出ませんが、心が潤みました。
ただ、見終わって二、三日たつと一つの欠落感が拭えません。
そのあたりについて、簡単なあらすじと共に書いてみたいと思います。
その前に、シガーニー・ウィーヴァー(祖母)さんの渋い演技、フェリシティ・ジョーンズ(母)さんの切実な演技がとても良かったと言っておきたいと思いますし、
それ以上にコナー役のルイス・マクドゥーガル少年の様々な表情に賞賛の拍手を贈りたいと思います。
批評
スペイン?に住む小柄な少年コナーが主人公です。
絵が好きで頭も良さそうです。
学校ではガタイの大きな同級生にイジメられています。
両親は離婚し、大好きな母はガン?治療中ですが、治療の方法も尽きてきたようす。
しかしコナーと母は、明日こそは治る、次の治療は効果があるはず、と声を掛け合っています。
コナーが家事を頑張っています。
祖母が来ます。祖母は娘が治療に専念できるよう、またコナーが家事をしなくていいように、引き取ると告げます。
コナーは厳格で小言の多い祖母が嫌いなので拒みます。
(あれ?コナーはお母さんと離れたくないから断るわけではないの?)
アメリカLAに住み、第二の世帯を持っている父が来ます。
父がLAに引き取ってくれるのかと期待したコナーですが、父にその気はありません。
(あれ?コナーはお母さんと離れてもいいの?)
そのあとコナーは荒れます。祖母の家を破壊し尽くします。
コナーは毎晩悪夢を見ます。崩れた崖から落ちそうな母の手を必死に引っ張り上げようとするのですが、ついにその手は離れ、母は落下して消えてしまいます。
そのつどコナーは目が覚めます。
(この悪夢は繰り返し紹介されますので、重要であることがわかります。)
そんなある夜、「コナー」とささやく声が聞こえます。怪物です。丘の上の樹齢千年をゆうに超えそうなイチイの木の精のようです。
(おそらくセイヨウイチイの木Yew。実は食用になるがタネはイチイと同様に有毒。なお、この怪物が<ささやく>のはこのとき限り。あとはだいたい大きな声で話すから、邦題はピンと来ない。だいたい、原題のcallはささやくではなく呼ぶ意ですよね。)
怪物は、何度も現れて三つの物語を語ります。
一つ目は、善と悪とは画然としないという話です。人間は善人でも悪人でもなく、たいてい善と悪の間に生きているというのです。
二つ目は、信念は大切だという話です。嫌なやつでも信念を貫けば立派だし、いい人でも信念を捨てたら・・というのです。
この二つは、実に美しいアニメーションで描かれます。楽しい話ではありませんが、うっとりします。
ところが三つ目の物語が問題です。ここはアニメーションがなく、これまでのようにイチイの木が見て来た昔話でもありません。
コナーがいまぶち当たっている壁を突き破る現実の映像で語られます。
具体的には、いじめっ子が和解を求め、「きみは自分が殴られたかったんだな。もうしない。君は透明人間だから。」と言ったことに逆上し、逆にいじめっ子をぶちのめし、入院させるほどの怪我を負わせます。
これはたぶん反則です。
私は原作を読んでいませんが、そこにはもう一つ昔話があったのではないでしょうか。
その話をアニメーションで見たかったなと思いました。
このことがこの作品に抱いた唯一の不満ですし、コメント欄に書いた欠落です。
もう一つの昔話については私の誤解かもしれませんが、なんだか上映時間の制限のためにカットされてしまったような唐突感があったのです。
さて、本作はこのあと大詰めを迎えます。
怪物の正体は最後の最後に判明します。
そのあたりまで書いてしまうことはなかろうと思い、そろそろ筆を置きます。
ただ一つ、映画に慣れていない方は見落とすかもしれないポイントを一つだけ紹介しておきます。
上述のように、コナーは二度荒れます。キレます。
しかし二度とも誰からも罰は下されませんでした。
「罰は無し?」と尋ねるコナーの顔はホッとした表情には見えないはずです。
そしていじめっ子のあのセリフ。。。。
コナーはなぜ荒れるのでしょうか。
その答えはきちんと説明されますが、その答えの伏線がこれだったのか、と
気がつくと満足感が得られるはずです。
難しい図形の問題が解けたときのように。
こういうきちんと作られた映画は、きちんと考えて観た方が楽しいですよね。
『怪物はささやく』A MONSTER CALLS
評価:☆☆☆☆☆☆☆・・・
年度:2017年
鑑賞:2018年BS/CSで視聴。
監督:J・A・バヨナ
原作:シヴォーン・ダウド、パトリック・ネス
音楽:フェルナンド・ベラスケス
俳優:ルイス・マクドゥーガル(コナー) シガーニー・ウィーヴァー(祖母)
フェリシティ・ジョーンズ (母) トビー・ケベル(父) ジェニファー・リム
ジェラルディン・チャップリン(教師) リーアム・ニーソン(怪物の声)
製作国:アメリカ、スペイン
allcinemaの情報ページはこちら

予告編より
コメント
美しくて深い映像と、真摯な物語。
観ている間は久しぶりに傑作と出会った快感と共に在りました。
涙は出ませんが、心が潤みました。
ただ、見終わって二、三日たつと一つの欠落感が拭えません。
そのあたりについて、簡単なあらすじと共に書いてみたいと思います。
その前に、シガーニー・ウィーヴァー(祖母)さんの渋い演技、フェリシティ・ジョーンズ(母)さんの切実な演技がとても良かったと言っておきたいと思いますし、
それ以上にコナー役のルイス・マクドゥーガル少年の様々な表情に賞賛の拍手を贈りたいと思います。
批評
スペイン?に住む小柄な少年コナーが主人公です。
絵が好きで頭も良さそうです。
学校ではガタイの大きな同級生にイジメられています。
両親は離婚し、大好きな母はガン?治療中ですが、治療の方法も尽きてきたようす。
しかしコナーと母は、明日こそは治る、次の治療は効果があるはず、と声を掛け合っています。
コナーが家事を頑張っています。
祖母が来ます。祖母は娘が治療に専念できるよう、またコナーが家事をしなくていいように、引き取ると告げます。
コナーは厳格で小言の多い祖母が嫌いなので拒みます。
(あれ?コナーはお母さんと離れたくないから断るわけではないの?)
アメリカLAに住み、第二の世帯を持っている父が来ます。
父がLAに引き取ってくれるのかと期待したコナーですが、父にその気はありません。
(あれ?コナーはお母さんと離れてもいいの?)
そのあとコナーは荒れます。祖母の家を破壊し尽くします。
コナーは毎晩悪夢を見ます。崩れた崖から落ちそうな母の手を必死に引っ張り上げようとするのですが、ついにその手は離れ、母は落下して消えてしまいます。
そのつどコナーは目が覚めます。
(この悪夢は繰り返し紹介されますので、重要であることがわかります。)
そんなある夜、「コナー」とささやく声が聞こえます。怪物です。丘の上の樹齢千年をゆうに超えそうなイチイの木の精のようです。
(おそらくセイヨウイチイの木Yew。実は食用になるがタネはイチイと同様に有毒。なお、この怪物が<ささやく>のはこのとき限り。あとはだいたい大きな声で話すから、邦題はピンと来ない。だいたい、原題のcallはささやくではなく呼ぶ意ですよね。)
怪物は、何度も現れて三つの物語を語ります。
一つ目は、善と悪とは画然としないという話です。人間は善人でも悪人でもなく、たいてい善と悪の間に生きているというのです。
二つ目は、信念は大切だという話です。嫌なやつでも信念を貫けば立派だし、いい人でも信念を捨てたら・・というのです。
この二つは、実に美しいアニメーションで描かれます。楽しい話ではありませんが、うっとりします。
ところが三つ目の物語が問題です。ここはアニメーションがなく、これまでのようにイチイの木が見て来た昔話でもありません。
コナーがいまぶち当たっている壁を突き破る現実の映像で語られます。
具体的には、いじめっ子が和解を求め、「きみは自分が殴られたかったんだな。もうしない。君は透明人間だから。」と言ったことに逆上し、逆にいじめっ子をぶちのめし、入院させるほどの怪我を負わせます。
これはたぶん反則です。
私は原作を読んでいませんが、そこにはもう一つ昔話があったのではないでしょうか。
その話をアニメーションで見たかったなと思いました。
このことがこの作品に抱いた唯一の不満ですし、コメント欄に書いた欠落です。
もう一つの昔話については私の誤解かもしれませんが、なんだか上映時間の制限のためにカットされてしまったような唐突感があったのです。
さて、本作はこのあと大詰めを迎えます。
怪物の正体は最後の最後に判明します。
そのあたりまで書いてしまうことはなかろうと思い、そろそろ筆を置きます。
ただ一つ、映画に慣れていない方は見落とすかもしれないポイントを一つだけ紹介しておきます。
上述のように、コナーは二度荒れます。キレます。
しかし二度とも誰からも罰は下されませんでした。
「罰は無し?」と尋ねるコナーの顔はホッとした表情には見えないはずです。
そしていじめっ子のあのセリフ。。。。
コナーはなぜ荒れるのでしょうか。
その答えはきちんと説明されますが、その答えの伏線がこれだったのか、と
気がつくと満足感が得られるはずです。
難しい図形の問題が解けたときのように。
こういうきちんと作られた映画は、きちんと考えて観た方が楽しいですよね。
Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)
│映画
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。