2018年07月10日
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
データ
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
評価：☆☆☆☆☆☆☆・・・
年度：2017年
鑑賞：2018年BS/CSで視聴。
監督：石井裕也
原作：最果タヒ
俳優：石橋静河（美香）池松壮亮（慎二）ポール・マグサリン（アンドレス） 田中哲司（岩下）
松田龍平（智之）野嵜好美 大西力 佐藤玲 三浦貴大 市川実日子
製作国：日本
allcinemaの情報ページはこちら
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
コメント
観ていて心地良く、たいへんセンスの良い佳作です。石井裕也監督の才気がきらめき、文学への理解の深さが伺い知れます。
漆黒の闇のない都会の夜。
ですから、しばしば登場する都会の夜景シーンは美しくスケール感もあります。
ただ、全体にきめ細かさが際立つ映画ですから、スクリーンでなくても十分に堪能できました。
こじれてめんどくさい若い女性とこじれてめんどくさい若い男性の恋物語。
石橋静河さん（美香）と池松壮亮さん（慎二）が適役。
センシティブな人物を素のように演じ、
時に饒舌に、時に棒読み風に緩急をつけた台詞回しで楽しませてくれます。
石橋静河さんは、若い頃の原田美枝子さんによく似た表情をすると妻が言います。
二世俳優のラベルを剥がし、この先どのような俳優になっていくのか楽しみです。
池松壮亮さんのヒリリとした存在感はすでに折り紙つき。
『万引き家族』でも短い出番ながらきわめて印象的な役を演じていました。
幾重にも捨てられた体験を持つため、不信の塊のように生きる美香は看護師。
遺体に手を合わせながら、心の中で遺族に「だいじょうぶ。すぐに忘れるから。」と慰める。
生まれつき片方の目がほぼ見えない慎二は、日雇いの肉体労働の仲間の中に居場所を見つけている。
自分のすぐそばに死が在ることに怯えているのは、あるいは家族を喪ったのか。
友人の死や温かい交流を続けていたアパートの隣室のおじいさんの死が彼に与えたダメージの大きさは、だから甚大でした。
そんな二人でも、生きている限り出会いはありうるし、不信や不安を共有できるがゆえにそれが溶け去っていくような恋もありうると映画は言うのです。
地方の閉塞感を描いた作品は時々目にするのですが、
一千万都市東京に住む若者の不安を題材にした作品は（私には）久しぶりでした。
今は昔のアートシアター系の実験映画に似て、しかし圧倒的に完成度の高い映画になりました。
工事現場の日雇い労働の場面がよく描かれています。
仕事中に死ぬな、という社長。
担ぐ荷の重量感、腕が疲れきってパンパンになりチャックも上げられないところ。
ちょっとした油断が怪我を生むあのやってもた感。
などなど肉体労働の経験者がスタッフにいたのかなと思わせるリアルさ。
アンドレス、
そう、妻子の待つフィリッピンに帰るのが正解。
もはや日本は外国人が働きたくない国ランクの上位が定位置になったのだから。
技能実習制度（外国人研修制度）などタコ部屋労働と変わりなく、最低賃金を守らないどころか数々の人権蹂躙や不法行為の温床になっていることを、私たち自国民が放置黙認しているような国だから。
タバコの火が東京の夜景に変わるシーンシフト、どなたもあっと思ったのでは？
「小賢しい、でも好き」とは妻のセリフでした。
あっ、と言えば、美香（石橋静河さん）が驚くと発する「あっ」は「あ」に濁点が打たれた発声で面白いですね。
松田龍平さんは軽めの人物を演じて持ち味発揮。
石井監督とのマッチングは、『舟を編む』でまざまざと拝見しました。
しかし、マニアックな印象の俳優なのに仕事に不自由しない方ですね。使われすぎを心配しています。
田中哲二さんは、慎二に自殺を心配されるような不遇さの中でなんとかポジティブに生きて行こうとする日雇い労働者を好演。
小林薫さんに憧れて演劇を志したというだけのことはある実力をみごとに発揮されました。助演賞ものですね。
路上のシンガー（野嵜好美さん）の「Tokyo Sky（がんばれ〜）」の歌が綺麗事でなくグイグイ響いてきます。
慎二がラブホで女性に「がんばれ」と言う声がとても温かかったのは、この歌のおかげですね。
歌にはそんな力があることを、石井監督は以前の『川の底からこんにちは』の「木村水産社歌（しじみのパック詰の歌）」でも実証して見せようとしましたね。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
評価：☆☆☆☆☆☆☆・・・
年度：2017年
鑑賞：2018年BS/CSで視聴。
監督：石井裕也
原作：最果タヒ
俳優：石橋静河（美香）池松壮亮（慎二）ポール・マグサリン（アンドレス） 田中哲司（岩下）
松田龍平（智之）野嵜好美 大西力 佐藤玲 三浦貴大 市川実日子
製作国：日本
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(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
コメント
観ていて心地良く、たいへんセンスの良い佳作です。石井裕也監督の才気がきらめき、文学への理解の深さが伺い知れます。
漆黒の闇のない都会の夜。
ですから、しばしば登場する都会の夜景シーンは美しくスケール感もあります。
ただ、全体にきめ細かさが際立つ映画ですから、スクリーンでなくても十分に堪能できました。
こじれてめんどくさい若い女性とこじれてめんどくさい若い男性の恋物語。
石橋静河さん（美香）と池松壮亮さん（慎二）が適役。
センシティブな人物を素のように演じ、
時に饒舌に、時に棒読み風に緩急をつけた台詞回しで楽しませてくれます。
石橋静河さんは、若い頃の原田美枝子さんによく似た表情をすると妻が言います。
二世俳優のラベルを剥がし、この先どのような俳優になっていくのか楽しみです。
池松壮亮さんのヒリリとした存在感はすでに折り紙つき。
『万引き家族』でも短い出番ながらきわめて印象的な役を演じていました。
幾重にも捨てられた体験を持つため、不信の塊のように生きる美香は看護師。
遺体に手を合わせながら、心の中で遺族に「だいじょうぶ。すぐに忘れるから。」と慰める。
生まれつき片方の目がほぼ見えない慎二は、日雇いの肉体労働の仲間の中に居場所を見つけている。
自分のすぐそばに死が在ることに怯えているのは、あるいは家族を喪ったのか。
友人の死や温かい交流を続けていたアパートの隣室のおじいさんの死が彼に与えたダメージの大きさは、だから甚大でした。
そんな二人でも、生きている限り出会いはありうるし、不信や不安を共有できるがゆえにそれが溶け去っていくような恋もありうると映画は言うのです。
地方の閉塞感を描いた作品は時々目にするのですが、
一千万都市東京に住む若者の不安を題材にした作品は（私には）久しぶりでした。
今は昔のアートシアター系の実験映画に似て、しかし圧倒的に完成度の高い映画になりました。
工事現場の日雇い労働の場面がよく描かれています。
仕事中に死ぬな、という社長。
担ぐ荷の重量感、腕が疲れきってパンパンになりチャックも上げられないところ。
ちょっとした油断が怪我を生むあのやってもた感。
などなど肉体労働の経験者がスタッフにいたのかなと思わせるリアルさ。
アンドレス、
そう、妻子の待つフィリッピンに帰るのが正解。
もはや日本は外国人が働きたくない国ランクの上位が定位置になったのだから。
技能実習制度（外国人研修制度）などタコ部屋労働と変わりなく、最低賃金を守らないどころか数々の人権蹂躙や不法行為の温床になっていることを、私たち自国民が放置黙認しているような国だから。
タバコの火が東京の夜景に変わるシーンシフト、どなたもあっと思ったのでは？
「小賢しい、でも好き」とは妻のセリフでした。
あっ、と言えば、美香（石橋静河さん）が驚くと発する「あっ」は「あ」に濁点が打たれた発声で面白いですね。
松田龍平さんは軽めの人物を演じて持ち味発揮。
石井監督とのマッチングは、『舟を編む』でまざまざと拝見しました。
しかし、マニアックな印象の俳優なのに仕事に不自由しない方ですね。使われすぎを心配しています。
田中哲二さんは、慎二に自殺を心配されるような不遇さの中でなんとかポジティブに生きて行こうとする日雇い労働者を好演。
小林薫さんに憧れて演劇を志したというだけのことはある実力をみごとに発揮されました。助演賞ものですね。
路上のシンガー（野嵜好美さん）の「Tokyo Sky（がんばれ〜）」の歌が綺麗事でなくグイグイ響いてきます。
慎二がラブホで女性に「がんばれ」と言う声がとても温かかったのは、この歌のおかげですね。
歌にはそんな力があることを、石井監督は以前の『川の底からこんにちは』の「木村水産社歌（しじみのパック詰の歌）」でも実証して見せようとしましたね。
Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)
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