2018年10月02日

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

データ
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

評価:☆☆☆☆☆☆☆☆・・
年度:2008年
鑑賞:封切り時にスクリーンで鑑賞。
監督:ティム・バートン
原作:スティーヴン・ソンドハイム、ヒュー・ウィーラー
音楽:スティーヴン・ソンドハイム
俳優:ジョニー・デップ(スウィーニー・トッド) ヘレナ・ボナム・カーター(ミセス・ラベット) アラン・リックマン(ターピン判事) ティモシー・スポール サシャ・バロン・コーエン エド・サンダース
製作国:アメリカ
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本稿は在庫一掃私の鑑賞記録(ログ付け)のための記事の一環です。昔書いたままの文章、短か過ぎるコメントや古い記憶に基づく記述の場合もありますのでご了承ください。再見の機会があれば、補足修正する可能性が高いです。


『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』




コメント


いやもう素晴らしい。
というか、ダークな色彩とクールな雰囲気を背景に行われる殺戮がツボ。
ミュージカル嫌いな私でも、これなら有りのスムースさ。
笑ってしまいたいけど、笑っちゃいけないと諌める小市民の私を、振り切って笑ってしまった私。


 おびただしく流れる血の色が微妙に血の色じゃないところが、『シザーハンズ』/『チャーリーとチョコレート工場』につながる作り物世界の達人の映画。
 ティム・バートン
 そうそう、『ビートル・ジュース!』から始まったのだった。

 その作り物世界の中でぎりぎりなリアル感を醸し出す主役俳優の絶妙演技と歌唱。
 ジョニー・ディップ
 『デッドマン!』から好きになったんだった。

 もう少し詳しく言えば
 こんな場所は現実には存在しませんよと、おとぎ話のミニチュアセットのような街並をまず俯瞰して示した『シザーハンズ』。
 一つの街だけでセールスが成り立つエイボンレディ。
 エドワードはズバリ人造人間だった。こんにちははじめまして両手がはさみの人造人間さん。
 その手でちょきちょきすれば植木がみごとな造形に早変わり。

 あり得ない色彩のチョコレートを製造するありえない工場を設定してくれたから、ゴールデン・チケットを持つ子どもたちだけでなく、観客の誰にとってもはじめてのありえない見学ができた『チャーリーとチョコレート工場』。
 ウォンカさんの表情がふつうの人間のようにスムースに変化していれば、あっというまに二流の映画だったのに。

 この二作に比較すると本作『スウィーニー・トッド』は最初、現実感あふれる映画に見える。
 ばい煙にくもるリアルなロンドンを再現したと見せかける。
 けれどカメラはその<セット>を飛翔して舞台となったパイ屋にたどりつく。
 客が来ない店でパイをつくり続ける女店主。
 きちんと説明されない無実の罪とその後の苦難。
 城の塔に閉じ込められた姫様のようなトッドの娘。
 役者たちの白すぎる化粧。
 一晩で仕上がる死体すべり台。
 一瞬でひげを剃る超絶技巧の床屋技。
 燃えさかるオーブンの前でダンス。

 映画が始まって五分もたてばまちがいなくこれはおとぎ話だとわかるのに、その残虐シーンに観客はおぞけをふるい目を背ける。
 なぜ?
 それにはジョニー・ディップの「迫真のつくりもの演技」の神業に秘密がある。
 ティム・バートンの、人は観客はそうしたものだと言う見切りに秘密がある。

 ヘレナ・ボナム・カーター、すごくいい。
 脇役、あるいは助演として、荒唐無稽なフィクションをリアルに感じさせる力がある俳優。
 ぶっ飛んだ作品と観客とを結ぶ赤い糸。

 さいごにひとこと。
 ジョニー、歌声がいいね。
 でも、
 しばらくは一人で床屋に行かない。
 



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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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