2018年09月14日

『許されざる者』

データ
『許されざる者』

評価:☆☆☆☆☆☆・・・・
年度:2013年
鑑賞:封切り時にスクリーンで鑑賞。
監督:李相日
原作:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ(オリジナル脚本)
俳優:渡辺謙(釜田十兵衛) 柄本明(馬場金吾) 佐藤浩市(大石一蔵) 柳楽優弥(沢田五郎)  
   忽那汐里 小池栄子 近藤芳正 國村隼 滝藤賢一 小澤征悦 三浦貴大
製作国:日本
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『許されざる者』

パンフレットより


コメント

暴力の時代を生きた男が暴力のない時代に生きられるか

いかに幕末の動乱を生きたとはいえ、
人殺しの過去を背負った者たちが暴力と無縁で生き直すことの難しさ。
暴力の空虚さを知ってしまった上で再び暴力を振るった男と、暴力的であり続けてさらに野心を燃やす男とが出会った。
オノレもヤツも許されることはないのだと知ったからには、解決は暴力のほかない。

そういうモチーフの映画です。
もちろんクリント・イーストウッド監督による同名の傑作映画のリメイク。
原作での、西部開拓時代の終わりを、
本作での、明治維新の動乱の終わりに置き換えてうまく行きました。

イーストウッド監督の平和と友愛への祈りが、
李監督に受け継がれて新たな映像作品に化けていく。
マイノリティーへの敬意を深めて。

元作と比較して好き嫌いで批評するのは簡単ですが、
それはかなり無意味ではないかな、と感じましたので、ここでは控えておきます。
リメイクとしては上々ではないでしょうか。
大作にありがちな冗長な気恥ずかしさがありません。
素晴らしく美しい北海道ロケの映像と、柄本さん・小池さんと出会うだけでも、見る価値はあります。

また、映画中でもっとも目を引いた俳優は沢田五郎を演じた柳楽優弥さんでした。
五郎はアイヌと和人の血の混じった青年で、渡辺謙さん演じる十兵衛と行動を共にするのですが、
その境遇からの脱却を願うエネルギーがほとばしるような演技は秀逸でした。
聞くところによると、監督や渡辺謙さんには随分鍛えられたということ。
役者としての脱皮を果たした作品になったのではないでしょうか。
(私はここから彼のファンになりました。)


なお、些細な注文を一つだけ書かせてください。
役名が、その俳優が演じるカラーというかオーラというか、と合致せず、違和感がとてもありました。

たとえば、渡辺謙さん演じる主人公は、<釜田十兵衛>という名を持っているようには思えません。この名にふさわしい俳優は、たとえば小林薫さん、古田新太さん。
たとえば、敵役に<大石一蔵>という名をつけるなら、演じる俳優は佐藤浩市さんではなく、たとえば石橋蓮司さん、生瀬勝久さん。
渡辺謙さんや佐藤浩市さんを起用する企画ですから、別の名を用意すべきでした。

要するに語感やコトダマの違和感ですから、単なる私の主観的判断に過ぎないのですが、
私は登場人物の名付けは重要だと思っています。



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Posted by gadogadojp at 10:00│Comments(0)映画
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